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マイクロ法人を設立してもうまく行かない勤務医が多いのはなぜ?

M先生
年間約100万円程度の副収入(執筆業)があるのですが、友人からマイクロ法人を設立したら節税できるらしいという話を聞きました。私にもできるものなのでしょうか?
M様プロフィール
48歳
独身
循環器内科 勤務医
年収:1500万円(医業)+100万円(執筆業)

吉田
正直、勤務医の方でマイクロ法人を設立して大きな節税効果を得られる可能性のある方は多くありません。その理由と、そもそものマイクロ法人をつくると節税できると言われている理由について解説しましょう!

マイクロ法人に向く勤務医が少ない理由

数年前よりマイクロ法人やプライベートカンパニーと呼ばれる小さな法人を活用した節税方法を紹介する書籍やインフルエンサーが増え、勤務医の皆様からも、「マイクロ法人をつくりたい」というお問い合わせを数多くいただいています。

しかし、実際にマイクロ法人を設立することになるケースは10%以下で、ほとんどの方がマイクロ法人ではない選択肢を選ばれています。その背景には、あまり知られていませんが、勤務医の方とマイクロ法人の相性があまり良くないという事実が存在します。

その原因は主に下記の3つです。詳しく見ていきましょう。

①医業収入を一般法人で受け取れない

これはご存知の方も多いでしょうが、医師が医療行為の対価として得た報酬を一般法人で受け取ることは認められていないため、マイクロ法人をつくってもそこで受け取れるのは医業以外からの収入(M様も場合は執筆料の約100万円)のみです。

そのため、ご勤務先と交渉して給与の一部をコンサル料のような形で分けて振り込んでもらえないか交渉されている方も複数いらっしゃいましたが、それを認める病院は稀で、年々こういった手法にメスが入り厳しくなっているため、特に保険診療中心の医院は無理だと思っておいた方が良いでしょう。

マイクロ法人を使った節税を推奨する書籍の想定読者は一般的な会社員や個人事業主であるため、彼らであれば副業収入を全て会社で受け取るということも可能でしょうが、医師の皆様の場合は副業も別の医院でのアルバイトであるケースがほとんどです。そのため、アルバイト代を全て会社に…という方法は成り立ちません。

この大きなハードルがあるため、一般的な会社員や個人事業主のように会社をつくってもうまく所得を分散することができず、マイクロ法人を含む一般法人(株式会社や合同会社)を活用した節税手法がうまく機能しないのです。

②社会保険料が高くなる

社会保険料を安くする目的でマイクロ法人を活用するというスキームも巷に広がっていますが、この手法は勤務医を含む給与所得者(社会保険に加入されている方)には当てはまりません。そもそも、社会保険の加入者資格をお持ちの方が別法人の役員を兼務される場合、2社の社会保険料に加入しなければならず、2社から受け取る給与の合計額を基準として社会保険料が計算されるため、給与所得者がマイクロ法人を作っても社会保険料を安くすることはできなのです。

社会保険に加入されていないフリーランスの方など極一部の方は、ご自身の会社を使ってそこで社会保険に加入するというスキームが成り立つのでしょうが、残念ながらほとんどの勤務医の方は、マイクロ法人を作って会社から報酬を受け取ると社会保険料が高くなってしまうでしょう。

一方で、社会保険に加入中の給与所得者が副業(事業所得)で収益を得ても、その事業所得の分だけ社会保険料が高くなることはありません。この点では、わざわざマイクロ法人をつくらずに、個人事業を続けられた方がメリットが大きいと言えるでしょう。

③マイクロ法人の設立・運営にコストがかかる

一番安く設立できる合同会社を全てご自身で設立・運営したとしても、最低でも資本金以外に6万円の設立費用と、年間7万円の運営費用(赤字でも発生する法人住民税の均等割)がかかります。

さらに、書籍等で推奨されているやり方は、税理士費用を加味されていないことがよくありますが、法人の決算を忙しい医師の方が自力でやろうとするのは現実的ではなく、税理士に依頼すると当然その分の費用もかさみます。

①のように、法人で受け取れる利益が少なく、さらに②でお伝えしたように社会保険料を安くする効果も少ないため、M様が享受できる節税メリットは、これらのコストより少なくなってしまう可能性も十分に考えられます。

これらの負担増を考えると、一般的に節税のメリットがそれを上回るのは副業の収益が300万円を超えたあたりからと言われています。

そもそも経費を落としたいだけであれば個人事業のみで十分です。例えば、M様のケースであれば執筆に必要な文献や執筆で使っているパソコンの購入費用や作業や商談等に使った喫茶店での飲食費は執筆業の経費になります。

まとめ~M様へのご提案~

M様はご相談いただいた当時開業届を出されていない状態で、執筆業の報酬を雑所得として申告されていました。雑所得では損益通算や青色申告特別控除などのメリットが享受できないため、開業届と青色申告承認申請書を提出されることをお勧めしました。

個人事業の青色申告であれば、freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを使えば、ほとんど会計知識がなくても税理士に頼むことなく簡単に青色申告を済ませることができます。

勤務医の節税事例をより詳しく知りたい方はこちらの記事も一緒にご覧ください。

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