どちらがお得?暦年贈与と相続時精算課税制度

S先生
子供も全員成人したので、そろそろ相続税対策を始めようかと考えています。
暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できないと聞いたのですが、私にはどちらの方が向いているのでしょうか?
S様プロフィール
55歳(美容整形外科勤務医)
奥様(55歳、専業主婦)
お子様(25歳、23歳、21歳、20歳)
資産(預貯金7000万円、株式2000万円、首都圏と関西圏に不動産を多数保有)

吉田
S様のご年齢と資産規模であれば、暦年贈与を選ばれた方が相続税の節税効果を得やすいと思われます。

暦年贈与を利用するメリット・デメリット

資産規模が大きく、比較的お若い方は、トータルで大きな資産を贈与できる暦年贈与を選択した方が、時間を味方につけて相続税を安く抑えることができる可能性が高くなります。
ただし、万が一早くに亡くなってしまった場合には、その節税効果が限定的になるため、以下の項目に注意して実施されることをお勧めします。

できる限り若いうちから贈与を始める

死亡前3年以内の贈与は相続財産に加算されてしまうため、できる限り早いうちから贈与を開始された方がその効果を得やすくなります。しかし、生前に贈与した方が得だからと、焦って贈与しすぎて、長生きした場合の生活費が不足してしまったというお話もお聞きしたことがありますので、必ずご自身の生活費に影響が出ない範囲内で計画的に贈与を行ってください。

贈与する金額と時期はバラバラにする

暦年贈与を選ぶことで毎年110万円までの贈与が非課税になるのですが、例えば毎年110万円ずつを同じ時期に贈与し続けた結果、最初から大きな額の贈与を行う予定だったと、暦年贈与が否認されてしまったケースもありますので、贈与する金額や時期はバラバラにするようにしてください。また、現金の手渡しではなく、贈与する側とされる側の合意の上、振込によって贈与を行うことで、暦年贈与を否認されるリスクは低くなります。

相続時精算課税制度を利用するメリット・デメリット

相続時精算課税制度を利用すると、トータル2500万円まで無税で贈与することが可能です。さらに、暦年贈与のように時間をかけて贈与する必要はないため、短期間で大きな金額を贈与することが可能になります。

今後値上がりが見込める資産や収益を生む資産の贈与には有効

もしS様のお持ちの不動産の中で、今後大幅な値上がりが期待できるものがあれば、相続時精算課税制度を利用することで、贈与時点での評価額に対して課税されるため、相続税は安くなります。しかし、日本国内の不動産の大部分は経年劣化に伴い評価額が下がっていく傾向にありますので、残念ながらその効果はあまり期待できません。
一方で、S様がお持ちの多くの不動産は毎月家賃収入を生んでいるため、生前贈与を行うことで、譲渡後にお子様が受け取る家賃収入の分だけ相続税の課税額を少なくすることができます。

小規模宅地の特例が使えなくなる

相続時精算課税制度を利用するデメリットとして、一度選択すると撤回できないこと、暦年贈与との併用もできないことなどがありますが、小規模宅地の特例との併用が認められていないことで、生前贈与を行ったことで増税になってしまったというケースも見受けられます。
小規模宅地の特例は、その要件を満たすことで宅地の相続税評価額を最大80%も減額する効果を持ちますので、相続時精算課税制度を利用したことで、その適用外となってしまうと本末転倒です。

法人を活用する方法

S様のように事業規模で投資をされている方は、その事業を法人化(資産管理会社を作る)し、その事業ごとお子様に譲る計画を立てるという方法もあります。株式会社であれば、株を生前にお子様に譲ることで、より効率的な贈与が可能となり、不動産のように均等に分けにくい資産を平等に分割することも可能になります。この手法はトヨタなどの大企業も行っている手法です。

まとめ

昨年末、路線価による相続税評価が否認されたといったニュースが世間をにぎわせていましたが、あのニュースになった事例を見ても、もし50代、60代のうちに似たような対策を取っていたと仮定すると、結果は違っていたかと思われます。
相続対策は、50代から考え始めて早すぎることはありません。今からであれば多くの選択肢の中から、S先生に合った方法を選べるはずです。

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