その対策として、勤務医時代から月2.3万円ずつ積み立てているiDeCoの掛け金を増やすか、小規模企業共済に加入するかで迷っています。
どちらを優先した方が良いでしょうか?
開業1年目
奥様(歯科衛生士)
小規模企業共済は医療法人化すると加入者資格を失う
T様に小規模企業共済をお勧めしなかった最も大きな理由に、医療法人化すると小規模企業共済を続けることができないことが挙げられます。
顧問税理士のお話では、経営が順調でいらっしゃり、すでに医療法人化の準備を始められているとのことでしたので、その段階であれば医療法人になっても続けられるiDeCoの拠出を一時的に増やされた方が良いのではないかとお伝えしました。一時的とお伝えしたのは、医療法人化するとiDeCoの拠出限度額が勤務医時代と同じ2.3万円となり、企業型確定拠出年金を導入してもその上限は5.5万円となり、6.8万円まで拠出できるのは今だけであるためです。
T先生の場合はiDeCoをお勧めしましたが、小規模企業共済の方をお勧めするケースもあります
次に、それぞれに向く方はどのような方なのかお伝えしましょう。
小規模企業共済の方がお勧めな人
iDeCoと異なり、小規模企業共済の運用は国が行い、その利率は現在約1%です。途中解約をせず、65歳まで20年以上かけ続ければ、資金が減ってしまうことはありません。
そのため、もしT先生がずっと個人事業を続けられるご予定であれば、小規模企業共済をお勧めしていたと思います。
iDeCoにない小規模企業共済のメリットとしては、掛け金の範囲内で貸付制度を利用できるという点です。低金利で即日融資を受けることも可能であるため、万が一の時も安心です。
また、長期的にかければ確実に増えて戻って来るという点では、投資等による資金の目減りを許容できないという方にもおすすめです。
iDeCoの方がお勧めな人
まず、大前提として、勤務医や医療法人の役員には小規模企業共済の加入資格がありません。そのため、加入資格がない人や、T様のように近い将来その加入者資格を失う予定の方にはiDeCoをお勧めしています。
また投資に挑戦してみたいとお考えの方にも、その掛け金全額が所得控除になって節税しながら、投資で増やせる可能性もあるiDeCoは非常に魅力的なのではないでしょうか。
iDeCo最大のデメリットは途中で引き出すことも解約することもできないということです。60歳まではそこにいくら資金が入っていても、使うことはできませんので、余裕を持った掛け金の設定が必須です。
iDeCoと小規模企業共済は併用可能
iDeCoと確定拠出年金は併用できますので、資金に余裕があり、どちらでもメリットを享受できる方であれば両方に加入して、両方の節税効果を得ることも可能です。
所得税・住民税の税率が50%の個人開業医の方が、小規模企業共済に月7万円、iDeCoに月6.8万円拠出すると、年間80万円以上の節税が可能です。
どちらも個人開業医にとっては節税効果が高く、私的年金を積み立てられる数少ない制度ですので、まだ加入されていない方は是非ご検討ください。