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医療法人化予定があっても小規模企業共済に加入するべきなのか?

小規模企業共済は個人開業医でも活用できる節税手段であり、貴重な退職金原資ですが、医療法人化すると加入資格を失います。そのため、将来的に医療法人化する予定があるが、加入した方が良いのか?というご相談をよくいただきます。今回は継承4年目の歯科医O先生の事例を基に解説しましょう。

O先生
昨年はコロナの影響であまり芳しくなかったのですが、継承して1~3年目は順調に売り上げが伸びていたため、そろそろ税金対策を始めたいと考えています。
そんな中、税理士さんから小規模企業共済への加入を勧められました。将来的に医療法人化も考えているのですが、数年後に医療法人化する可能性があっても小規模企業共済に加入した方が良いのでしょうか?
O様プロフィール
35歳
継承4年目
歯科開業医
売上推移:4500万円→7000万円→7800万円→6000万円
家族:奥様(事業専従者)

吉田
既に医療法人化準備中なのであれば加入すべきでないのですが、O先生のように将来的に医療法人化するかもしれないといったご状況であれば、専従者の奥様と一緒に小規模企業共済に加入されることをお勧めします。
その理由を詳しくお伝えしましょう。

医療法人化して小規模企業共済の加入資格を失ったら?

医療法人化すると小規模企業共済の加入資格を失うことはご存知の方が多く、中小企業庁のHPには、『掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回ります』と説明があるため、20年以上個人事業主を続けないのであれば加入しない方が良いのではないかと思われている方も一定数いらっしゃるようです。

そもそも、医療法人化して加入資格がなくなった場合に支払われる解約返戻金は、『準共済金』もしくは、平成22年12月以前に加入した個人事業主が、金銭出資により法人成りをした場合は『共済金A』に該当するため、先述の任意解約とは取り扱いが異なります。(共済金Aの事例は加入期間が長い前提であるため本記事では割愛します)

任意解約の場合は12か月以上掛け金を納付すると、掛金納付月数に応じて、掛金合計額の80% ~ 120% 相当額が解約手当金として返ってくる一方で、準共済金は掛金納付月数が 12か月以上で222 か月(18 年6か月)までは掛金合計額、223 か月(18年7か月)以降は共済金B(老齢給付)の 91%相当額とパンフレットに記載があります。

つまり、医療法人化によって小規模企業共済の加入資格を失っても、1年以上掛け金を支払っていれば、その掛け金は全部戻ってくるのです。

これが、医療法人化を検討されている状態であっても、O先生と共同経営者に当たる奥様に小規模企業共済への加入をお勧めした最も大きな理由です。

小規模企業共済に加入するメリット

個人開業医が小規模企業共済に加入するメリットは主に以下の2つです。

掛け金が全額所得控除になるため、節税効果が高いこと

退職金代わりに共済金を受け取れること(受取時には退職所得控除が使えるため税金面でもお得!)

いずれも、個人開業医にとって限られた手段の1つであるため是非検討されることをお勧めします。

小規模企業共済に加入する上で知っておきたい注意点

先ほど、医療法人化を準備中なのであれば、加入すべきでないとお伝えしたのは、加入して1年以内(掛金納付月数が12ヶ月未満)に解約してしまうと、準共済金を受け取れなくなってしまうためです。

1年以内に解約する可能性があるのであれば、加入すべきでないと覚えておきましょう。

また、医療法人化し、小規模企業共済の加入資格を失ったら、それまでの掛け金が払い戻され、その準共済金等には税金がかかります。準共済金は一括受け取りで退職所得に該当します。退職所得にかかる税金はその年の所得税率で決まるため、医療法人化1年目は役員報酬を低めに設定されることをお勧めします。

 

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