43歳
経営セーフティ共済の概要
加入資格
非営利法人である医療法人は加入資格がなく、継続して1年以上事業を行っている中小企業者を対象とした制度です。クリニック経営者においては、個人開業医がその対象です。
掛け金
その掛金は月々5000円〜20万円で、5000円単位で毎月の掛け金を変更することができます。最大800万円まで積み立てることがができます。
経営セーフティ共済最大のメリット
節税を目的として経営セーフティ共済に加入されている個人開業医の方が多くいらっしゃいますが、そもそも、経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)は中小企業の連鎖倒産を防止することを目的として運営されている制度です。そのため、取引先が倒産した際には、掛金総額の10倍までの金額を無担保・無保証・無利子で借入れることができます。
また、取引先が倒産していない場合でも、共済契約者が臨時で事業資金が必要になった場合に借入が利用でき、解約せずに積立額の一定の範囲内で低利で融資を受けることも可能です。
経営セーフティ共済×節税
経営セーフティ共済は、掛金をまとめて前払いすることが可能で、掛金1年分を前納することによって高い節税効果が期待できます。最大23ヶ月分(最大460万円)をその年の経費として算入することが可能となるため、例えば開業2~5年目で急に売り上げが上がってしまった方などが顧問税理士から勧められるケースが多いようです。
【徹底比較】小規模共済 VS 経営セーフティ共済
どちらも独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する制度で、掛け金が全額経費になる点、医療法人化すると加入資格を失う点、短期間で解約すると元本割れしてしまう点など多くの共通点が存在しますが、その大きな違いは、その目的の差にあります。
経営セーフティー共済は連鎖倒産を防止することが目的の制度であるため、取引先が倒産した場合に掛金総額の10倍までの金額を無担保・無保証・無利子で借入れることができる点が最大のメリットと言えるでしょう。
一方で小規模企業共済は小規模企業共済は退職や廃業時の退職金制度であるため、月々の掛け金の上限は70000円ですが、その総額に上限はなく、一時期より利率は下がっていますが、年1%程度の利息が付くことも経営セーフティー共済にはない特徴です。さらに、年金代わりに分割で受け取ることも可能です。
万が一の場合の補償や短期的な節税を狙いたいなら経営セーフティー共済、将来の退職金や年金を目的とし、長期的な節税を目的として活用するなら小規模企業共済から始めるのがお勧めです。
経営セーフティ共済を節税に用いる場合の注意点
経営セーフティ共済は、支払った掛金が全額経費になるため、節税目的で加入されている個人開業医の方も多くいらっしゃいますが、単なる課税繰り延べにしないためには、注意が必要です。
その大きな理由は、掛け金が全額経費になる一方で、解約した時に受け取る解約手当金は、全額その年の収入となるためです。そのため、掛け金を経費計上していた時~解約する時まで所得が一定であった場合には、トータルで支払う金額は変わらず、単に税金を払う時期を先送りしていたにすぎません。
また、先述の通り、医療法人化すると加入資格を失いますので、収入が増えている時期に加入し、収入が高くなっている時期に解約してしまうと、トータルで支払う税金が増えてしまう場合もあります。そうならないように、医療法人化の初年度は役員報酬を低めに設定し、解約手当金にかかる税金を抑えるという方法もあります。
さらに、納付月数が12ヶ月未満で解約した場合は解約手当金を受け取れなかったり、40ヶ月未満の場合では、受け取れる金額が掛金総額より少なくなってしまったりと、短期で解約してしまうと節税効果以上に資金が減ってしまうこともあります。
このように経営セーフティ共済を用いて節税するには、いつ解約するのかという出口戦略が必須です。
そのため、例えば医療法人化の予定がなく、税金が高いと感じていらっしゃる個人開業医の方が、経営セーフティ共済に加入し、退職時に退職金として解約手当金を受け取るのか王道パターンです。
また、医院の改修や設備投資などで大きな資金がが必要になった場合に、解約するケースもよくあります。もし、その年が解約手当金の金額以上の赤字である場合には、解約手当金に税金がかからなくなるためです。
まとめ
経営セーフティ共済は、多くの個人開業医が加入されている小規模企業共済と同様に、その掛け金が全額経費になるため節税できると言われています。
そして、節税できるだけではなく、万が一の際には共済金貸付が利用できるのも経営セーフティ共済の大きなメリットの1つです。
しかし前述の通り、単に掛け金を経費にするだけでは、課税の繰り延べにしかなりません。
『いつ解約するのか?』『その解約手当金にかかる税金を抑えるためには何をしなければならないのか?』などしっかりと出口戦略を立てたうえで、加入を検討されることをお勧めします。