内科勤務医
年収1500万円
奥様(専業主婦)
お子様(12歳)
課税所得1800万円超の根拠は税率の差
課税所得が1800万円を超えると、所得税の税率が40%になります。住民税を合わせた個人の税率50%と法人の実効税率約33%との差を利用するのが、法人を活用した節税スキームの要です。法人を設立するにも運営するにも、税理士の顧問料や赤字であっても発生する税金など一定の費用を伴いますので、その負担増を加味しても設立もメリットが期待できるのは税率50%以上が目安といわれているのです。
W様の場合、配偶者控除の適用から外れて納税額が増えたため、法人設立を考えられるようになったとのことでしたが、その法人を設立する目的が節税のみなのであれば、その効果を享受できるか微妙なラインにいらっしゃるかと思います。
高所得者は配偶者に働いてもらった方がお得!?
税金や社会保険の負担増を懸念して、あまり働かないようにされているケースも見受けられますが、2018年分の申告より配偶者控除に納税者本人の所得制限が設けられたため、課税所得が1000万円を超える場合には、配偶者に働いてもらった方が世帯の可処分所得が増えるケースが多くなりました。
しかし、税制における扶養と、社会保険における扶養の考え方は全く違うため、奥様の年収が130万円以上になると、奥様ご自身で社会保険料を負担する必要が生まれます。社会保険料の負担を加味して考えると、年収を130万円以下に抑えるか、170万円以上稼ぐかのいずれかになるように調整すると良いといわれています。
W様にとって法人設立のメリットとは!?
W様の場合、奥様にカフェ経営をしたいという夢があり、お子様が小学校を卒業されたのを機に、もう一度働くことを希望されているとのことでした。そのため、例えば、そのカフェの運営・管理を目的とした法人設立などであれば検討の余地があるのではないかとお伝えしました。しかし、法人を運営していくためには個人事業以上の固定費を伴うため、その事業で安定的に利益が出る目処が立ってから法人成りを考えられても遅くありません。W様にも、一度、法人を設立した場合の収支をシミュレーションされてみることをお勧めしました。
また、W様からも似たご相談を受けましたが、巷の噂に聞く、病院からの収入の一部を法人で受け取るようなことは、一般法人で医療行為による収入を受け取ることが禁止されているため、お勧めできる手法ではありません。そもそも、W様がお勤めのような大規模な総合病院において、給与の一部を一般法人に振り込んでもらえたという事例も残念ながら聞いたことがありません。もし、それが認められたとしても、この手法は、一時的に税金が減るかもしれませんが、後々追徴税を課せられる等のリスクを伴うため、避けられたほうが良いでしょう。