売上が8000万円を超えたら医療法人化をした方が良いと言われていたのはひと昔前のこと。
2021年5月現在、医療法人化しても以前のように法人保険を活用して大きく節税することは難しくなったこともあり、医療法人化しなくても良いのではと考える人が増えてきているように感じます。
しかし、そんな今でも医療法人化するのが最善策だと考えられるケースも数多くも存在しています。
今回は、そんな変わりつつある医療法人化の目安と、医療法人化を考えるべき順番と注意点について順を追ってお話しましょう。
STEP1 個人開業医でも取り組める公的制度を活用しよう
個人開業医のままでも取り組める節税策は複数あり、所得税率が33%以下の方などであれば基本的な節税策に取り組めば十分節税できるケースも珍しくありません。
まずは、下記で取り組めていないものがあれば、どれも医療法人化と比較するとリスクの低いものばかりですので、是非導入を検討してみてください。
・小規模企業共済
・経営セーフティー共済
・青色申告
・専従者給与
STEP2 医療法人化に向く人・向かない人の違いを理解しよう
次にご自身が医療法人化に向く人なのか否かを確認しましょう。
・後継者がいる(もしくは退職まで20年程度の期間がある)
・利益率30%以上
・後継者がいない(もしくは10年以内に閉院する可能性がある)
・利益率20%以下
節税目的で医療法人化を検討される場合は、医院をいつまで続ける予定なのか?どの程度の利益が出ているのか?の2点の確認が必須です。
医療法人化すると医療法人という財布が1つ増えることでお金の流れが大きく変わります。
それによって、税金がコントロールしやすくなる一方で、社会保険料や税務顧問料の負担が増すのが一般的です。
より詳しく知りたいという方はこちらもご参照ください。
売り上げが8000万円を超えたら医療法人化した方が良いのか?
STEP3 医院経営の出口を設定しよう
STEP2でもあったように、どのような医院の出口を想定しているかは医療法人化の判断をする上で大きな意味を持ちます。
節税効果は減ったものの、法人保険を活用して退職金の積み増しができることは医療法人化する大きなメリットの1つです。効率的に退職金積立を行うためには、医院の出口を予め設定しておくことが必須なのです。
退職時期に返戻率のピークを迎える保険に入ったり、受け取れる退職金の限度額や受け取りたい退職金金額から逆算して積み立てを行うためには、医院で出口を大まかにでも設定しておくことは不可欠です。
また、現在設立可能な新医療法人には、継承に関る手続きが簡単になるというメリットも存在します。節税効果はそこまで大きくはないけれど、継承目的で医療法人化される方もいらっしゃいます。
もし、事業継承の可能性の有無も医療法人化を決定する上でとても重要となりますので、継承の可能性のある方がいらっしゃるなら、その方と話したり、進路が決定するのを待って法人化するのも一手です。
STEP4 医療法人化以外の選択肢と比較検討しよう
医療法人化しない決断をされた方が、MS法人等の一般法人を用いる手法を選択されるケースも多くあります。
特にお子様が医療以外の道に進まれた方などは、継承するのに医師・歯科医師の国家資格が必要ない一般法人を選ばれる方が多くいらっしゃいます。
ただし、MS法人を含む一般法人で医療行為の対価を受け取ることは禁じられていますので、その所得分散効果は医療法人化と比べると少なくなります。
STEP5 シミュレーションを行う
最後に、医療法人化した場合、医療法人化しなかった場合、一般法人を活用した場合などそれぞれのキャッシュフロー表を作成し、どの程度の差が生まれるのかを確認しましょう。
そうすることで、医療法人化してから『役員報酬をいくらに設定したらいいのか』『どんな法人保険に入ったらいいのか』といった悩みを抱えることなく、順調なスタートダッシュが切れるはずです。
まとめ
節税効果が減ってしまったとはいえ、順調な経営をされている個人開業医の方々にとって『医療法人化』は、事業を拡大させたり、経営を安定させたり、税金をコントロールしたりするために検討したい手段の1つであることには変わりありません。
医療法人化したがあまり効果が実感できないといった事態を招かないためにも、事前に専門家と相談しながら医療法人化のメリット・デメリットについて理解し、入念な計画を立てたうえで、医療法人化されることをお勧めします。