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医療法人化するとどの程度相続税を減らすことができるのか?

医療法人化を検討される理由で最も多いのが所得税の節税ですが、事業継承にかかる相続税を減らす目的で医療法人化を検討される方も数多くいらっしゃいます。

今回は相続税対策を目的に医療法人化を検討されていた内科開業医のK先生の事例を基に解説します。

K先生
息子が無事医学部を卒業し、将来的に医院を継ぎたいと言ってくれているので、医療法人化を検討しています。
どの程度のメリットが見込めるものなのでしょうか?
K様プロフィール
61歳
内科開業医
売上8000万円
世帯年収3500万円
奥様:事業専従者(受付・経理業務を担当)
お子様:長女(専業主婦)、長男(後期研修医)

吉田
K先生は医療法人化することで、以下の3つのメリットを享受できる可能性が高いでしょう。
しかし、デメリットもありますので、それらを理解した上で総合的に判断していく必要があります。
順を追ってご説明しましょう。

メリット①継承時の税負担と手間が減る

K先生のご年齢やご収入、ご家族のご状況から、K先生が医療法人化することで得られるメリットとして最も大きいものがこの相続税・贈与税の負担と継承にかかる手間が減るというものです。
現在設立可能な医療法人は、持ち分のない医療法人(新医療法人)のみですので、医療法人の資産は出資者の相続財産に当たらず、相続税の課税対象にはなりません。
また、個人開業医のままでは、医療機器1つ1つの名義変更を始めとする煩雑な手続きが必要となりますが、医療法人化すると理事長の名義を変更するだけで、事業継承が済んでしまうのです。

メリット②所得税の節税効果が得られる

医療法人化すると節税できると言われているのは、医療法人化すると所得分散がしやすくなるためです。
例えば、医療系資格をお持ちではない奥様の専従者給与は現在500万円とのことでしたが、医療法人化して役員となることで、特に資格をお持ちではない奥様に1000万円程度の役員報酬を支払われている方も多くいらっしゃいます。
また、息子様や娘様を役員に加えて役員報酬を支払うことも可能です。
K様の昨年の納税額は世帯で約1000万円と非常に多額の税金を払われているため、医療法人化して、役員報酬を低めに設定することで、年間500万円以上納税額を減らすことも十分可能です。
役員報酬を低く設定した分を、法人に残すことで、その資金を活用して、退職金原資として運用したり、継承前に行うリフォームや医療機器の入れ替えを行ったりと、選択肢が広がります。

メリット③退職金の積み増しができる

K様は既に60歳を超えられているため、確定拠出年金など一部制度の活用ができない状況ですが、医療法人化して退職金目的の法人保険を活用することにより、退職金を積み増すことが可能になります。
現状K様の退職金は小規模企業共済のみですので、検討の余地があるでしょう。

デメリット①医療法人の設立・運用にはコストがかかる

医療法人化すると、税理士の報酬や社会保険料が上がるのが一般的です。
また、その設立に際しても、100万円程度のイニシャルコストがかかります。
それらの負担が増えることを加味しても、医療法人化をするメリットがあるのかどうか事前にシミュレーションをしておきましょう。

デメリット②退職金として受け取っても良い金額には上限がある

例えば、医療法人に3億円の資金が貯まっていたからと言って、それを全部退職金として受け取ることができるかというとそうではありません。
退職金の上限額は、『最終報酬月額×在籍年数×功績倍率(理事長:2.6~2.7)+功労加算(30
%)』と決まっています。
20年間理事長を務め、退職時の役員報酬が月100万円の方が受け取れる退職金は、最大で7000万円程度です。
新医療法人の場合は、継承時にかかる税金面では有利なのですが、解散する場合には、残余財産は国や地方公共団体に帰属するため、解散の可能性がある場合は、この退職金の上限額を意識して法人に残す資金を調整する必要があるのです。

入念なシミュレーションをして医療法人化をすべきか判断しよう

先述の通り、役員報酬をいくらに設定するか?退職金をいくらずつ積み立てるのか?などの決断は、納税額に大きな影響を及ぼし、ここで間違った選択をしてしまったことで、医療法人化したメリットが全然感じられないとおっしゃる方もいらっしゃいます。
残念ながら、役員報酬設定や退職金の準備などに関して、十分なアドバイスをしてくださる税理士さんばかりではないようですので、迷った場合にはそのままにせず、他の専門家に相談されることをお勧めします。

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