神経内科勤務医
平成28年米国不動産を購入
まず、税制大綱の問題の箇所を見てみましょう。
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。
(1)個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得
を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の
損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建
物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用につい
ては、生じなかったものとみなす。
なぜ節税ができなくなるのか?
以前にこのブログでも海外不動産を用いた節税スキームをご紹介しましたが、アメリカ等海外の中古不動産を活用した節税スキームは短期間で減価償却を出すことで、帳簿上赤字の事業を作り、本業との損益通算をすることにより課税所得を圧縮させる仕組みです。
今回の改正により、海外中古不動産賃貸事業の赤字を他の所得と損益通算することが令和3年分の申告から認められなくなるということは、もし減価償却費によって不動産賃貸業が帳簿上赤字であったとしても、本業の利益を圧縮し税金を減らす効果がゼロになるということを意味します。
そうなると、課税所得は、特に何もしなかった場合と同じになり、そもそも国内の不動産のように相続税対策にも向かないため、節税効果はなくなってしまうのです。
既に海外不動産をお持ちの方への影響は?
今回の改正は、令和3年以降の購入者が対象ではなく、既にお持ちの方にも、令和3年分の申告から影響がありますが、G様の場合は、3年前にアメリカの中古不動産(償却期間4年)を購入されているため、タイミング的に想定していた節税効果は得られる見込みです。幸い税金面では大きな影響は無さそうですが、今回の改正により売却を早める日本人オーナーが増え、想定していたタイミングでの売却が困難になる可能性も考えられますので、予定通りの出口を迎えられるまでは油断できません。
今回の改正により、直近で海外不動産を購入された方は、令和2年分までしか従来想定していた節税効果は見込めないため、節税効果がなくなっても持ち続けるべきか否かを比較検討する必要性が出てきました。損益通算ができなくなり、節税効果がなくなってから焦って対策を考えるのではなく、まだ1年以上の時間がありますので、事前にどうするのがご自身にとって一番有利になるのかシミュレーションを行い、複数の出口を考えておかれることをお勧めします。
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