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非課税枠を利用した教育資金贈与の落とし穴

T先生
父から2人の子ども対して、非課税枠を使った教育資金の贈与を検討していると言われました。贈与を受け取る側として知っておくべき注意点などはあるのでしょうか?
T様プロフィール
32歳
整形外科勤務医
ご主人様(公務員)
お子様(3歳、1歳)
お父様(開業医・58歳)
お母様(開業医・57歳)

吉田
そもそも、教育資金の贈与は非課税であるという大前提を理解した上で生前贈与を受けるべきか検討する必要があるでしょう。詳しくご説明しましょう。

教育資金の贈与税の非課税制度とは?

まず、制度の概要を見てみましょう。国税庁のHPには以下のように書かれています。

平成25年4月1日から令和3年3月31日までの間に、30歳未満の方(以下「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)から1信託受益権を取得した場合、2書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合又は3書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります。

期間限定の制度で、子や孫1人につき1,500万円まで非課税になると書かれていて、非常にお得な制度のように思われますが、先述の通り、教育資金の贈与は原則非課税です。
例えば、T様のお父様が、直接お子様が通われる学校に入学金や授業料を支払った場合、それによって贈与税の支払いが必要となることはありません。T様のご両親はまだ50代とお若く、T様のお子様もまだ小さいため、必要な都度支払ってもらうという方法のほうが、メリットが大きい可能性があります。

教育資金の贈与税の非課税制度の留意点

この制度を活用するデメリットは大きく分けて3つあります。

①使途の制限と領収書の提出義務がある

制度の名前の通り、贈与した資金の使途は教育資金に限定され、金融機関に領収書等を提出する必要があります。都度窓口で手続きをする必要がある金融機関もあるようで、贈与者が受贈者にとって使い勝手の悪い金融機関を選んでしまったがために、この領収書を提出する手続きがとても面倒だというお声もよく聞こえてきます。郵送等でも対応してもらえる金融機関もありますが、都度領収書を提出しなければならない等、ある程度資金を引き出す際に手間がかかる点は考慮に入れておきましょう。

②30歳までに使い切れなかった部分には贈与税がかかる

受贈者が30歳になるまでに使い切れなかった資金は、贈与者に戻すか、受贈者が贈与税を支払ったうえで譲り受けることになります。都度学費を代わりに支払ってもらう形式であれば支払う必要のなかった贈与税が発生する可能性がありますので注意が必要です。

③要らぬ揉め事を生む可能性も

資産家の方の中には、相続税の支払いを少なくするために、上限の1500万円をお孫様全員に一括贈与されているケースもよくお見かけするのですが、過去には、贈与を行った方が病気になり思いの外治療費がかかってしまったため、老後資金が枯渇してしまったり、兄弟間に不公平感が生まれていらぬ揉め事が起こったりしたといったお話を聞いたこともあります。
T様の場合は一人っ子とのことで、後者の心配は不要かもしれませんが、教育資金として贈与してもらったものは、教育資金以外の目的には使うことができませんので、ご両親の生活費や万が一の際の費用の支払いに影響が出ない範囲内で支援を受けてください。

まとめ

T様の場合は、下のお子様が大学を卒業される時点で、ご両親は80歳前後と、まだまだお元気でいらっしゃる可能性も高いため、今急いで教育資金の一括贈与を受ける必要はないかと思われます。
一旦は、都度贈与を受ける形を取り、例えばお子様が私立の医学部を目指されることが決まるなど、大きな教育資金が必要となった際に再検討されても良いのではでしょうか。
ご質問から少し話がずれますが、ご両親が現在経営されている医院(旧医療法人)をT様が継承される際には、教育資金でかかる税金とは比較にならないほどの税金が発生するでしょう。医院継承に関してもきちんと対策ができている人とできていない人との間に大きな差が生まれています。相続・継承対策に関しては、早めに対策をされた方が有利になる場合が多いため、トータル的に、ご両親がお持ちの資産をどのように継承していくのかについて、この機会にご両親と、専門家も交えながらお話をされてみてはいかがでしょうか。

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